公務員の副業
公務員の副業と聞けばこんな方が多いと思います。
公務員は副業できないでしょ!!
『公務員=副業禁止』というイメージがある...
これまで「公務員で副業なんて言語道断」というイメージを持っていた方もいるでしょう。
しかし、今大きく風向きが変ってきています。結論から言いますと、許可さえ下りれば副業ができるようになっています。
そこで今回は、公務員の副業に関わる基礎知識とおすすめの副業を紹介していきたいと思います。
公務員の副業禁止を規定している2つの法律
公務員の副業禁止については、「国家公務員法」と「地方公務員法」の2つの法律で以下のように記載されています。
「公務員は副業禁止!」とよく言われていますが、実際のところそれは違います。後ほど解説しますが、人事院の規定で条件付きですが兼業・副業が認められています。
まずは副業規制の根拠となる法令を見てみましょう。
国家公務員法
(信用失墜行為の禁止)
出典:e-Gov国家公務員法(昭和二十二年法律第百二十号)
第九十九条 職員は、その官職の信用を傷つけ、又は官職全体の不名誉となるような行為をしてはならない。
(秘密を守る義務)
第百条 職員は、職務上知ることのできた秘密を漏らしてはならない。その職を退いた後といえども同様とする。(中略)
(職務に専念する義務)
第百一条 職員は、法律又は命令の定める場合を除いては、その勤務時間及び職務上の注意力のすべてをその職責遂行のために用い、政府がなすべき責を有する職務にのみ従事しなければならない。(中略)
(私企業からの隔離)
第百三条 職員は、商業、工業又は金融業その他営利を目的とする私企業(以下営利企業という。)を営むことを目的とする会社その他の団体の役員、顧問若しくは評議員の職を兼ね、又は自ら営利企業を営んではならない。
(他の事業又は事務の関与制限)
第百四条 職員が報酬を得て、(中略)その他いかなる事業に従事し、若しくは事務を行うにも、内閣総理大臣及びその職員の所轄庁の長の許可を要する。
(https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=322AC0000000120#707)
※「兼業」も「副業」も法的に定義されていないので同じ意味でOKです。
地方公務員法
(信用失墜行為の禁止)
出典:e-Gov地方公務員法(昭和二十五年法律第二百六十一号)
第三十三条 職員は、その職の信用を傷つけ、又は職員の職全体の不名誉となるような行為をしてはならない。
(秘密を守る義務)
第三十四条 職員は、職務上知り得た秘密を漏らしてはならない。その職を退いた後も、また、同様とする。(中略)
(職務に専念する義務)
第三十五条 職員は、法律又は条例に特別の定がある場合を除く外、その勤務時間及び職務上の注意力のすべてをその職責遂行のために用い、当該地方公共団体がなすべき責を有する職務にのみ従事しなければならない。
(営利企業への従事等の制限)
第三十八条 職員は、任命権者の許可を受けなければ、商業、工業又は金融業その他営利を目的とする私企業(以下この項及び次条第一項において「営利企業」という。)を営むことを目的とする会社その他の団体の役員その他人事委員会規則(人事委員会を置かない地方公共団体においては、地方公共団体の規則)で定める地位を兼ね、若しくは自ら営利企業を営み、又は報酬を得ていかなる事業若しくは事務にも従事してはならない。ただし、非常勤職員(短時間勤務の職を占める職員及び第二十二条の二第一項第二号に掲げる職員を除く。)については、この限りでない。2 人事委員会は、人事委員会規則により前項の場合における任命権者の許可の基準を定めることができる。
(https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=325AC0000000261#382)
※「兼業」も「副業」も法的に定義されていないので同じ意味でOKです。
難しい言葉ばかりなので、わかりやすく要約してみました。
~ 公務員が禁止されている副業 ~
- 許可なく、営利企業等の役員となること
- 許可なく、自ら営利企業を営むこと
- 報酬を得て従事すること(業種を問わない)
※「職務専念義務」「信頼失墜行為の禁止」「守秘義務」は公務員としての大原則なので副業するときも守ること!
これらを行う際には、任命権者の許可が必要です。これを反対解釈すると、該当しない場合は、任命権者の許可が必要ないこととなります。(不動産・株式などの少額の私財運用等)
また、任命権者の許可については、基準を定めることができますが、『基準を定める=合致する副業は原則認める』こととなるため、担当部署レベルの内部ルールは存在するものの、許可基準を明確化した自治体は存在しませんでした。
ところが、2017年から、許可基準の明確化が行われ始めています。
副業許可基準の明確化
全体の奉仕者たる公務員にとって、いわゆる『副業解禁』は非常に高い壁によって阻まれていると思われてきましたが、ついに事実上解禁の日が訪れました。
神戸市と生駒市が2017年に許可基準を明確化し、2019年には国家公務員の副業許可基準が明確化されたのです。
これに倣い、許可基準を自主的に明確化する自治体がちらほら現れましたが、国が全国の自治体に対して副業解禁を促す通知等を行ったことにより、全国的に許可基準を明確化する流れができつつあります。
今後数年間で、全国の自治体において均質的な許可基準が定められ、公務員の副業が一般化することは間違いないでしょう。
これで、公務員も自由に副業が出来る……なんてことはもちろんありません。むしろ、グレーゾーンの副業が潰されていくことで、『実質的な経済活動』である副業からは遠ざかる可能性すらあります。
公務員の副業が、厳しく取り締まれるようになった事例もあるようです。
これは、副業解禁が活発になったことで、公務員に対する副業基準を明確化させる動きが進み、良くも悪くも、表ざたに出ていなかった副業規制が公になったからでしょう。
つまり、一概に「公務員が副業を始めやすくなった」とは、言い切れないのかもしれません。
しかし、何よりも、副業「許可」を得ることの重要性が増したと考えるべきでしょう。「許可」さえ得られれば、これまでよりも一層、副業が行いやすい環境がつくられているのは間違いありません。
公務員ができる副業の種類
区分 | 副業の種類 | 職場の許可 | POINT |
---|---|---|---|
1⃣ | 不動産 株式 太陽光 FX 投資信託 仮想通貨 フリマ・オークション ポイントサイト | 許可不要(場合によっては必要) | 不動産・太陽光は一定の規模未満なら明確に認められている特権的副業 |
2⃣ | アフィリエイト・アドセンス・ 投げ銭(SNS・ブログ) | 許可不要だがグレーゾーン | |
3⃣ | 執筆・講演 部活動や少年団コーチ 非営利団体従事 家業手伝い 小規模農業 | 許可必要 | 小規模農業は一定の規模未満なら明確に認められている特権的副業 |
4⃣ | 役員 自営 従業員(正社員・アルバイト・パート・クラウドソーシング) | 許可不可 |
1⃣基本的には許可不要な副業
ここに挙げるものは、基本的には行っても問題ない副業ばかりですが、自治体によっては、報告や許可が必要な場合がありますので、規則等を確認しましょう。また、規模等の条件によっては認められない場合があります。
不動産
不動産においては、国家公務員に対して次のような制限が設けられているため、地方公務員においても同様の範囲での運用と考える必要があります。
【賃貸】次のいずれかに該当するときは、自営に当たるものとして取扱う(認められない)
・建物が5棟以上
・部屋が10室以上
・土地の契約件数が10件以上
・駐車場が10台以上
・建築物や機械設備のある駐車場
・娯楽集会や遊戯等の設備を備えた不動産(劇場、映画館、ゴルフ場等)
・旅館やホテル等の特定業務に用いる建物
・賃貸収入の合計が年額500万円以上
これらに該当する場合は、自営に当たるため、私財投資であっても認められません。また、職務専念義務が損なわれないために、運営は全て家族や管理業者に委ねる必要があります。
株式
株式については、一定以上の株式を所有することで、経営に影響力を有することとなるため、無制限に可能ということではありません。
特に、在庁地域企業の発行する株式については、職務との特別な利害関係が成り立ってしまう可能性がありますので、避けるべきでしょう。
太陽光
太陽光発電については、発電容量が10kW未満であれば、全く問題なく可能ですが、10kW以上の場合は産業用太陽光発電として位置づけられており、『営利目的ではない』と言うには無理がありますので、認められません。
FX、投資信託、仮想通貨
FX、投資信託、仮想通貨については、個人として私財運用の範囲で行っている場合は問題ないため、法令違反や禁止行為等に留意すれば許可なく行うことができます。
フリーマーケット・オークション
フリーマーケットやオークションについては、アプリの発展普及によって、誰でも参加可能となりました。所有物の販売は全く問題ありませんが、転売目的で購入した商品を売る場合は、『営利目的』であるとともに『古物商許可』が必要となります。
その基準について、人事院が、次の通り例示してくれています!
【照会例 9】
Q. インターネットオークションやフリーマーケットアプリを⽤いて商品販売を⾏ってもいいですか。
A. インターネットオークションやフリーマーケットアプリを⽤いての商品販売は、営利を追求する⽬的でアカウントを取得するなどして店舗を設けたり、不特定多数への販売⽬的で⼤量に仕⼊れるなどして、定期的・継続的に⾏えば、⼩売業を営むものとして⾃営に該当し禁⽌されます。
出典:「義務違反防止ハンドブックー服務規律の保持のためにー」(https://www.jinji.go.jp/ichiran/ichiran_fukumu_choukai.html)
ポイントサイト
ポイントサイト等によるお小遣い稼ぎは、『ポイ活』という言葉がブームになっているとおり、気軽に空き時間で行えるため、大変人気があります。サービスで受け取ったポイントを現金に換金しているに過ぎませんので、営利性はなく、問題なく行える副業です。
怪しいと思われがちなジャンルですが、運営しているのは上場企業等ばかりで、仕組みがわかれば安心して行える副業の1つです。ただし、ポイント欲しさに友人や同僚等に勧誘行為を行うのは、トラブルの元になりますので、やめておきましょう。
2⃣許可不要だがグレーゾーンな副業
ブログやSNSによる発信を行っていると、アフィリエイトやGoogleAdSense、各種投げ銭システム等を導入することができます。
これらは、ブログやSNSの価値が生んだ結果となりますが、目的はあくまで情報発信であり、営利目的ではありません。
また、広告主や読者、商品購入者と特別な利害関係があるわけではなく(あったとしても潜在意識の中では成立していない)、広告や投げ銭の導入によって『職務専念義務』『守秘義務』『信用確保』が損なわれることはありません。
損なわれている場合、ブログやSNSの発信内容や方法に問題があるのであって、広告や投げ銭の有無とは無関係であると考えられます。
発生する収益があまりにも高額となってしまう場合は、『自営』の概念の内となってしまうため、法に触れてしまいますが、それはほんの一握りの稀なケースです。
こういったWEB系の副業については、裁判で争ったケースも未だなく、分類上『グレーゾーン』としました。
ただし、任命権者の許可が必要な『①営利企業等の役員となること②自ら営利企業を営むこと③報酬を得て従事すること』のいずれにも該当しないため、許可基準で明確化されることは期待できず、今後もグレーゾーンな状態は続くと思われます。
公務員のブログ副業はグレーゾーンに当たるため、「大丈夫だと思ってやった」と収入を得て懲戒処分にならないよう、念のために上司に相談をおすすめします。
許可を得られる可能性があるとしたら、以下のポイントを押さえるのが大切です。
・公務に活かせる可能性がある
・社会貢献性がある
・勤務時間中にはブログを書かない
・本業に支障を与えない範囲である
・公務員としての信用を損なわない範囲である
・外部に機密情報を漏らさない範囲である
上記6つの条件が揃っていれば、認められる可能性は上がるでしょう。
特にブログはネットさえ繋がればどこでもできるので、「勤務時間には絶対にしない」と強調しておきましょう。
3⃣許可が必要な副業
これらは前述のとおり、『①営利企業等の役員となること②自ら営利企業を営むこと③報酬を得て従事すること』のいずれかに該当するもので、任命権者の許可を要します。
執筆・講演
執筆や講演については、継続的又は定期的な従事に当たることはできませんが、2〜3時間の講演会で講師を務めたり、雑誌投稿した記事がたまたま掲載される見返りとしての報酬を受け取る程度であれば、許可されるのが一般的です。
部活動や地域少年団のコーチ ・非営利団体従事
部活動や地域少年団のコーチについては、『地域貢献』が目的であるため問題なく行うことができますが、『報酬』が発生する場合は任命権者の許可が必要です。非営利団体(NPO法人等)での従事についても、同様の取り扱いとなります。
家業の手伝い
家業の手伝いは、『職務専念義務』『守秘義務』『信用確保』が損なわない場合であれば、勤務時間外に行い、報酬を得ることができます。
また、家業を継承することで「手伝い」にとどまらず主体となって事業を行うこともできます。
この場合は人事院規則にあるとおり自営兼業承認申請書が必要になります。
小規模農業
小規模農業については、主として自己消費を目的として栽培し、消費しきれないものを販売する程度であれば、許可を得られる可能性が高いです。
また、人事院規則にも書かれている通り、特別扱いの3つの副業の内のひとつです。
「営利目的でない」「大規模でない」場合、申請不要で行うことができます。
規模について明確な規定はありませんが、販売農家に区分される「耕作面積が30a以上、または農産物の年間販売額が50万円以上」に該当する場合は申請するのが無難です。
基準を超えても承認されれば問題ありません。
4⃣できない副業
公務員は全体の奉仕者であり、営利を追求する立場とは相容れない存在であるため、ここに挙げたものは、任命権者の許可を得ることが不可能だと考えられます。
役員・自営・従業員(正社員・アルバイト・パート・クラウドソーイング)
週休日にクラウドソーシングを利用するのは、全く問題ないようにも思えますが、現状においては、諦めるしかなさそうです。
公務員の副業が一般化し、副業可能範囲の拡大を訴える声が大きくなれば、将来的に解禁されていくような気もしますが、まだまだ遠い未来のように思えます。
公務員の副業まとめ
老後2000万円問題やコロナによる年収減少は公務員にとって深刻です。
公務員といえば、安定した収入でのんびりと働いていれば良かったですが、これからは本業収入だけではとても満足に暮らしていくことはできなくなります。特に若年層の方は深刻です。
公務員という限られたルールの中でもできる副業があるので挑戦していくことが大切です。
10年後なのか、30年後なのか、50年後なのかはわかりませんが、公務員の副業が当たり前になる日はいずれくると思います!!
今のうちから、自分が「何をしたいか」「どうやってするのか」「何を注意するべきか」を事前にしっかりと押さえておきましょう。
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